Casanova, Giacomo/it
(ジャコモ・カサノヴァ/1725~1798)

 ヴェネツィア生まれのEpicurean。ある時は作家、あるいは劇作家、翻訳者、歴史家、聖職者、スパイ、音楽家、商人、政治家、哲学者、法律家、学者、魔術師、博徒、冒険家と、謎が多いこともカサノヴァたる所以として魅力深い人物であることに間違いはない。母は女優ザネッタ・ファルッシ、父は俳優ガエタノ・ジュゼッペ・カサノヴァであったたためカサノヴァ姓を名乗るも、実父は枢機卿や元首を輩出しているヴェネツィア共和国の名門貴族、ミケーレ・グリマーニであると考えられている。

 回想録として残された「我が生涯の物語」には、美食についてもふれている。

 「官能の喜びを培うことは、つめに私の主たる関心事だった。私にとってこれまで、それ以上に重要な事はなかった。」
 「私が自分の美しき女性のために生まれてきたと感じ、常にそれを愛し、力の及ぶ限り愛されようとしてきた。また美食を好んで我を忘れ、我が好奇心をそそるあらゆるものに、常に情熱を傾けて来た。」
 「私を色好みというのはお門違いだろう。私に義務があるとき、私の官能の力がそれをないがしろにさせたことは、未だかつてないのだから。同じ理由から、決してホメロスを酔いどれ扱いしてはなるまい。<ホメロスは酒を讃えたがために、大酒家と非難される/ホラティウス書簡集 (カサノヴァはホメロスのイリアスを翻訳している)>」
 「私は薬味のきいた料理を好んできた。ナポリの名コックの作ったマカロニのパイ、スペインの鍋料理、ニューファウンドランドのこってりした鱈、息苦しいほど強烈な匂いがするジビエ、そこに巣食った小動物が見えるようになり、申し分なく熟成したとわかるチーズ。女たちについていえば、私は愛する女の香りを、常に甘美と感じてきた。」
 「なんと退廃的な趣味だ! それを自ら認めながら赤面もしないとは、なんたる恥知らずかと、人は言うだろう。この批判は私を笑わせる。というのは、私は自分の粗野な趣味が、私にさらなる喜びを感じやすくさせると確信し、それらのおかげで自分を他人以上に幸福だと信じているのだから。」と結ばれている。

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