中国の唐時代の暦法で定められた季節の変わり目の日。節目。「五節供」に由来する。
●人日(じんじつ)の節供/ 1月7日 ―七草―
古く中国で正月7日に人を占ったことから人日という。冬を乗り越えて芽を出す若葉の力強さを取り込む七草粥で祝う。さらに七草のゆで汁に爪を浸し、柔らかくして切り無病息災を祈る「七草爪」という風習がある。
●上巳(じょうし)の節供 3月3日 ―雛祭ー
3月初めの巳(み)の日を上巳といい、古く中国では川で身を清め、人の形に紙を切り抜いた”ひとがた”で体をなで汚れを落とし、海や川に流す祓(はらえ)の行事の後に宴を催す習慣があった。ひとがたが次第に流し雛となり、雛人形となった。
邪気を祓い生命力が宿る仙木とされる桃を飾り、ちらし寿司、蛤の羹、菱餅、雛霰(ひなあられ)、白酒(桃酒)で祝う。古く宮中では、流水に酒盃を浮かべて歌を詠む「曲水の宴」が催された。
●端午(たんご)の節供 5月5日 ―菖蒲―
端午とは月初めの午(うま)の日を指すが、5月5日を端午の節供と呼ぶようになった。古く中国では薬採りの日とされ薬草を摘んだ。魔除けと考えられた薬草の菖蒲を、中国の武人、尚武(しょうぶ)、さらには勝負事をかけて武者人形や甲冑を飾り、鯉のぼりを立てて立身出世を願う。菖蒲湯で邪気を祓い、柏餅や粽(ちまき)で祝う。
京都の上賀茂神社では競馬(くらべうま)、藤森神社では駈馬(かけうま)が奉納される。
●七夕(しちせき)の節供 7月7日 ―星祭ー
古くは御霊(みたま)の衣服を織り棚に供え、汚れを祓う行事。そこに織姫星(織女星/しょくじょせい/ch、こと座のベガ/gr)と彦星(牽牛星/けんぎゅうせい/ch、わし座のアルタイル/gr)の伝説に基づいた星祭が結びついたとされる。織女は機織りを意味し、牽牛は収穫を意味する。前日に針仕事や文筆の上達などの願い事を書いた短冊を、邪気を祓うとされる笹竹に飾り、当日の朝に川に流す。古くは素麺の原型とされる索餅(さくべい)や邪気を祓う瓜で祝う。
宮中行事を伝承する冷泉家では、瓜・茄子・桃・梨・空豆・蒸し鮑・鯛を2組づつ、さらに五色の糸、花瓶に生けた秋の七草、五色の絹布・梶の葉を供え、手向けの蹴鞠(けまり)にはじまり、続いて雅楽や歌会が奉納される「乞巧奠(きっこうてん)」が催される。
●重陽(ちょうよう)の節供 9月9日 ―菊祭ー
縁起の良い陽数(奇数)の最大値”9”が重なることから重陽とよばれる。邪気を祓う菊を飾り、薬効があるとされる菊の香りを移した菊酒で長寿を願い祝う。
古くは菊の着綿(きくのきせわた)とよばれ、前日に菊の花の上に真綿をかぶせて夜露で菊の香りを染み込ませ、当日の朝にその真綿で身体を祓い無病息災と不老長寿を願う宮中の習慣がある。古今和歌集には「露ながら 折りてかざさむ 菊の花 老いせぬ秋の 久しかるべく」と紀友則が詠んでいる。また「栗の節句」ともよばれ、栗ごはんや蒸し栗を作り秋の収穫を祝う色彩もある。