日本の行事料理のひとつ。「御節(おせち)」は「御節供(おせちく、おせつく)」や「節会(せちえ)」の略で、人日の節供を挟む、新しい年の豊穣を司る歳神を迎える元旦から送り出す間の、歳神とともに祝う正月の料理を指す。
歳神は祖霊神であり、田の神、山の神で、日本神話では素戔男尊(スサノオ)と神大市比売(カムオオイチヒメ/大山津見神(オオヤマツミ)の娘)の間に生まれた大年神(オオトシノカミ)を指す。初日の出と共に山から下りて来ると言われることで、元旦や御来光の言葉がある。子孫繁栄や五穀豊穣に深く関わり、健康や幸福を授けるとされる。「正月様」「歳徳神(としとくじん)」ともいう。門松は歳神を迎える目印であり、鏡餅は正月中の歳神の居場所となる。鏡開きは歳神を送り出した後、ご神体となった鏡餅を頂く事で無病息災を願い正月をしまう。
「節会」は奈良時代に中国から伝わった「五節供」に由来し、朝廷内の行事として始められ供御を「節供」という。「五節供」は、一年で最も重要な節を人日(じんじつ)の節供(1月7日/七草)と言い、上巳(じょうし)の節供(3月3日/雛祭)、端午(たんご)の節供(5月5日/菖蒲)、七夕(しちせき)の節供(7月7日/星祭)、重陽(ちょうよう)の節供(9月9日/菊祭)の5つの節目を指す。江戸時代に公式行事となったことで一般に定着した。>節句
<御節料理のいわれ>
●重箱
めでたさを重ねる。正式には5段重。
一の重:「祝肴」黒豆、数の子、田作り、たたき牛蒡など。
二の重:「口取」栗きんとん、紅白かまぼこ、伊達巻など。
三の重:「焼物」海の幸。
与の重:「煮物」山の幸。(与と書く。四は使用しない)
五の重:「控えの重」なにもいれない。来る年のめでたさを重ねる空きを示す。
●黒豆
邪気を払い無病息災を願う。黒は魔除けの色。
●数の子
五穀豊穣、子孫繁栄を願う。
●田作り
五穀豊穣を願う。田植えの肥料に煮干しを使う事に由来。五万米(ごまめ)ともいう。
●たたき牛蒡
古代中国の霊獣、瑞獣を表す。家族や家業の安泰を願う。地中深く根を張ることから。ごぼうを叩き身を開いて調理することから開運をかつぎ、開き牛蒡ともいう。
●栗きんとん
金運を願う。金団と書く。
●紅白かまぼこ
初日の出に似ており、さらに紅白で縁起をかつぐ。赤は魔除け。白色は神聖。
●伊達巻
巻物に似ていることから、学問の成就を願う。
●紅白なます
平安と平和を願い、さらに紅白で縁起をかつぐ。
●ちょろぎ
長寿を願う。長老木、長老喜、千代老木、長呂貴と書く。
●酢蓮
たくさん穴があいていることから、先見性を願う。仏教では極楽池の清浄な植物とされる。
●菊花かぶ
長寿を願う。
●海老
長寿を願う
●鰤
出世を願う。
●鯛
縁起をかつぐ。
●煮しめ
家庭円満。それぞれ里芋や八頭は子宝、慈姑は出世、陣笠椎茸は壮健、楯豆腐は天下太平、手綱蒟蒻は精励、梅花人参は良縁、筍は出世、蓮根は先見性、金柑は金運を意味する。
●昆布巻
子孫繁栄を願う。昆布に子生の字をあてる。
●雑煮
餅は古来より神聖なものとされ、ハレの日は神々の供物であった。雑煮は、歳神を迎える元旦に、餅と土地の特産物を供え、それらをお下がりとして煮合わせた料理をいい、神と人とが一緒に食事をする直会(なおらい)を意味する。調理方法は地方により様々な特徴があり、おおむね関西では丸餅を使う白味噌仕立て、関東では角餅を使うすまし仕立ての傾向がある。餅の他にはその土地の特産物が使われ、東北では山菜やキノコ、日本海側では鮭、島根ではハマグリ、広島では牡蠣などがある。
古いしきたりが残る京都の雑煮は、頭芋または鶴小芋、亀甲大根、丸餅のトロッとした昆布だしの白味噌仕立てで、花かつおを盛り、元旦の祝膳とする。一家の主の雑煮には鶴小芋の代わりに頭芋が入る。また男性用のお膳は足の低い朱塗りに金蒔絵の紋が入り、女性用のお膳は足が高い黒塗りに金蒔絵の女性の紋が入る。祝膳には雑煮の他、結び昆布と小梅干が入った大福茶、田作り、たたき牛蒡、数の子などが添えられる。
●七草粥
中国の前漢時代では、正月に一年の吉凶を占なった。1日は鶏、2日は狗(犬)、3日は猪(豚)、4日は羊、5日は牛、6日は馬、7日を人、8日は穀の日とし、それぞれの一年の吉凶を占うことが、武帝に使えた東方朔の「東方朔占書」に記されている。「人日(じんじつ)」の節句は、人を占う行事に由来し、七種の若草で羹(あつもの)を作り、その生命力を取り込む。七草粥は、芹(セリ)、薺(ナズナ)、御形(ゴギョウ)、繁縷(ハコベラ)、仏座(ホトケノザ)、菘(スズナ)、須々代(スズシロ)を用いる。